コラム

必要不可欠な情報収集とは何か-新型コロナウィルスに関するアンケートを通じて考えたこと

新型コロナウィルスの発生に伴い、多くの大学で様々なアンケート調査が実施されました。従来の部署別の枠組みを超えた臨時の、あるいは緊急の調査を行う場合、どこの部署が行うか、集計するか、結果をふまえて対応策をどのように実行するかなど、議論されたのではないでしょうか。本学においては、学生の情報環境の整備状況や、遠隔授業を実施すると困ることなどを早急に調べる必要があると考え、比較的早い時期に実施しました。

この時に感じたことは、「アセスメント・プラン」に立ち戻って考える必要があるということです。例年と異なる状況下で授業が進行し、通学しないで学習している学生の状況がわからないため、学生に聞きたいことはたくさんあります。

授業はうまく履修できているか、課題は多くなりすぎていないか、例年と比べて学生の理解度はどうか、改善してほしいことはないかなどなど。調査を実施する目的や時期を明確に定めなければ、学生のところに様々な調査が異なる部署から届く可能性もあります。関係する教職員と話すと、短期的な設問も、中長期的な設問もあり、また多様な視点があるため議論がまとまらなかったり、結果として設問数が増えすぎたりすることもありました。

何のために(目的:why)、誰に対して(対象者:who)、何を(内容:what)、いつ(時期:when)、どのように(方法:how)の5WIH(オンラインアンケートなので「どこで:Where」はありませんが)の原則に立ち戻り、忘れがちな調査結果をフィードバックする対象者や方法も見通しながら、可能な限り最初の段階で長期的な事項も含めて把握できる調査を実施する必要があります。

今回の新型コロナウィルスのように国内外を取り巻く状況が日々変化している場合は、途中で目的や内容が変更されたり、スケジュールを見直したりすることも時には必要です。しかしながら、ある程度の骨格(核となる構造)がしっかりしていれば、そこに付け足していけば良いのです。

議論をしている中で設問項目が増える場合は、多様な関係者の聞きたい気持ちを尊重しつつ、「アセスメント・プラン」を中心とした「目的」に立ち戻ることが必要です。最も重要なのは授業を行うことだけではなく、DPにつながる学修の到達目標が達成できるよう、学生の学びを支援していくこと。学生の一人一人の顔が見えない中で、想像力を膨らませて、他大学の情報にもアンテナを向けながら、自学でできることを考え出すこと。そのような目的があれば、学生に聞く設問がぶれることはないと思います。

本学の調査事案でいえば、例年実施している授業アンケートに付け加えるべき項目、学生の遠隔授業の履修環境や前期を終えての全体的な満足度等のように臨時で聞くべきこと、定期的に実施している学生生活調査で聞くべき項目など、何種類かに分かれます。学生への負荷もありますが、学生も聞いてほしいことや言いたいことがあるはずですから、そういった声が拾えるよう準備する必要があると考えています。

近年の「学修成果の可視化」に伴い、「データ」に再度注目が集まっています。多くの研究者が述べているように、この状況下、「学習ログ」などを活用すれば学生の学びを測れます。これまでの対面式の授業では、学生が目の前にいるため、教職員の感覚や主観が先立ち、さほど分析を行う必要がないと考えられていたという事情もありました。

他方、このようなデータについて、どこまで分析に使ってよいかという議論もあります。アンケート調査であれば、最初に使用目的や個人情報の取扱いに関する説明を盛り込めばよいのかもしれません。しかしながら、「学習ログ」についてまだ明確な指針がない大学も多いのではないかと思います。匿名化した情報で分析するのか、あるいは入学前から卒業後まで追えるよう学生個人と紐づけるのか、教員に任せるのか、あるいは職員が担うのか、教職協働で行う場合の責任はどうなるのかなど、今後の議論の焦点になってくると感じています。

いずれにしても、新型コロナウィルスの発生で、データの重要性が再認識されたことは間違いないようです。この状況下だからこそ、平常時に実施しているデータ収集の活動がいかに大切であるかがわかっただけでなく、これまでIR担当者が知恵を出し合って蓄積してきたデータ収集(設計を含む)や、分析の方法などが、非常時下のアンケートのデータ収集にも活かされていると感じています。

この状況をIR活動のさらなる発展の機会と捉え、どんな状況下でも「学生の成長」に資する活動を推進していきたいと思います。

(明星学苑 岩野摩耶)