コラム

コモン・データ・セットに絡んだ調査~「共通の定義」の課題が浮き彫りに~

2014(平成26)年度に科学研究費補助金奨励研究を取得し、その報告は「文部科学教育通信 No383(2016年3月14日)」に書きました。今回はその中で取り上げたデータの扱われ方について紹介し、データの定義について考えたいと思います。

研究課題は「大学情報公開をIRに活かす-効果的な情報公開を通した職員組織の改善-」(課題番号:26907032)です。研究目的は、志願者とその保護者、高校教員等のステークホルダーを対象とした情報公開の現状に焦点をあて、それらの対象者のニーズに応える積極的・効果的な情報公開について検証するとともに、集積され発信された大学情報を大学の職員組織の改善に活用する方法を考えることでした。研究の中で、全国の私立大学(大学院大学を除く)の入試・広報担当者に対して、郵送によりアンケート調査を行いました(調査期間:2014年11月~12月。回答率41.2%)。

このアンケート調査の結果で気になったところは、多くの大学において入試・広報担当者等が学外からの問い合わせに回答する際、その都度上司等に確認する手間がかかったり、適切な情報を公開する前提条件となる統一されたしくみやルールが整備されていないということでした。回答者の43%が「しくみやルールはない」と回答しており、そのうち40%は「問い合わせのあった部署により回答が異なる可能性がある」と回答したのです。例えば、就職率について問い合わせを受けた場合、A部署では82%、B部署では86%と回答する可能性があるということです。また、外部からの正式なアンケート調査等への回答については比較的注意深く回答を準備する大学が多いものの、個人からの個別の問い合わせにも頻繁にあり、統一的な回答を準備するしくみが整備されていないという課題もありました。

2015(平成27)年度に取得した科学研究費補助金奨励研究では、今度はIR担当部署の担当者に対して同様の質問を行いました(といっても、IR担当部署からの回答は25%にとどまり、それ以外の部署からの回答が多く、IR部署やIR担当者の「不安定」な業務状況が推察されました)。回答をみると、前年度と同じような傾向がみられ、やはり学外からの調査・アンケート等を異なる部署で対応することがある場合、対応する部署によって回答が異なる可能性があるということがわかりました。

データを統一的に蓄積・共有するしくみ(例えば、ファクトブック)が必要ですが、それ以前の課題として「データの定義が明確になされ共有されていない」ことに問題があるのではないかと思いました。それは、全国の大学全体を通して必要であり、個別の大学の組織内でも必要です。統一的な定義の上でデータが蓄積され、比較され、議論されてこそ、質の向上が図れます。

本学においては、2015(平成27)年度から、調査類はすべて「学長室企画課」で集約し最終チェックを行う体制とし、ファクトブックを作成して共通のデータが共有されるように工夫がなされています。またダッシュボードでデータを可視化し、一部情報(退学率等)はタイムリーに見られるようにするとともに、ダッシュボードにも順次定義を記載するようにしています。

(明星学苑 岩野摩耶)